カテゴリー別アーカイブ: 好きなもの

「横尾忠則 寒山百得」展

横尾忠則さんの描く寒山拾得の世界を見てきました。
寒山拾得とは中国唐の時代の2人の伝説の風狂僧であり詩僧である、寒山と拾得のこと。
文殊菩薩と普賢菩薩の化身とも言われています。

古典的には、寒山はいつも巻物(経典)を持っていて、拾得は箒を持った姿で描かれているのだけれど、
その寒山拾得をモチーフに横尾忠則さんが独自の解釈で描いた102点もの作品が一堂に。
なので、寒山拾得ではなく、「寒山百得」(笑´∀`)

箒に乗った寒山が描かれていたり、
箒じゃなくて掃除機だったり、
経典の巻物をトイレットペーパーに替えて拾得が持っていたり、
便器が首からぶら下がっていたり、
はたまたルパンやAI,ロボットまで登場しています。

寒山拾得が駅伝をしていたり、
大勢で泳いでいたり、、、と2人だけじゃなくて、多面性もみせるし、
あ、ゴッホだ~~!とか、
これはマネの「草上の昼食」じゃない!?
って、

寒山と拾得が時空を縦横無尽に駆け巡り、暴れまくっています。
ものすごいエネルギーを放っているのだけれど、すごく軽やか。

めちゃくちゃ自由で、
はちゃめちゃで、
ユーモアに溢れていて、
つい、笑い出したくなるんです。。。

が、

人が少なくて静かな、しかも、
国立博物館の表慶館という通常は文化財などを展示している
非常にクラシックな場所で展開されているのだから、大声で笑えないのが難点。

自由でお茶目でユーモアたっぷりで遊び心満載!!!

そんな寒山と拾得をみていると、TAOの大老師のご尊顔が浮かんできたし、
寒山拾得の師匠(親玉)でもある豊干禅師はおなじくTAOの大尊敬する大きな師匠を彷彿とさせました。(これはわかる人しかわかりません)

今の自分の状況がついつい不安や哀しみに引っ張られてしまうのだけれど、
ものすごく元気をもらえたし、

あ~、父との時間は大切だけれども、
わたしはわたしの時間もうんとうんと大切にしよう!!

ってすごく気持ちが開放された一日になりました。

今もしかして、ちょっと元気がないって方がいらしたら、
そんな人にもすごくお勧めです!!!
是非是非心を自由に遊ばせてください。


小林秀雄講演録 ゴッホについて

  偶然に手にした、小林秀雄さんの講演の録音
小林秀雄さんと言えば、教科書にも載っているような日本を代表する批評家であり、芸術家ですね。

私はどのようなタイプのものでも、小説の類いは好きだけれど、思考をフルに働かせないといけないようなものは苦手。
これまでどうも苦手意識があって、手に取って読もうとするまでの食指が動かなかった小林秀雄さんの著書。

苦手を克服しようなんて気持ちはさらさらなくて、どんな声の人なんだろう?っていうくらいの軽い気持ちだったんだけれども・・・

ゴッホについて語るその講演を聞いて、
これまでちゃんと文章を読んでこなかったこと、
読もうともしなかったこと、
いや、
こんなにも胸躍る素晴らしいものに気づけなかった自分のアンテナを恥じるほどの、衝撃があったのでした。

面白くて、脈動していて、踊るように軽妙な語り口とその声がす~~っとはいってきて、小林秀雄さんの世界に引き込まれてしまいました。

いまさらですが・・・

すごい人ですね(..;)

ゴッホがどのようにして、どんな意識で、どのような思いを持って、描いていたのか、、、
それを知らずしてゴッホの絵をみても表層しかわからないと。。
ゴッホが弟さんにあてた手紙を読み尽くし、ゴッホについて知ろうとされたことがとても良く伝わってきます。

あらためて、ゴッホの絵を観たいな~と思います。



















顕神の夢ー幻視の表現者 圧倒的世界をみた

鎌田東二先生が監修された展覧会

「顕神の夢ー幻視の表現者ー村山槐多、関根正二から現代まで」
@岡本太郎美術館 を19日日曜に見てきました!!

今週末(25日まで)までで、残りわずかなので、ぜひとも紹介したいという気持ちはあふれるのに、
あまりにも圧倒されて、胸のあたりがグワングワンしていて、コトバにできずにいました、、、、(..;)

『見逃すと一生後悔するレベルの展覧会』だと保証します、と評していらっしゃる先生がいらして、ならば!!と観にいったのですが、
とにかく、とにかく、とにかく、

見て良かった!!と思いました。

展覧会は全部で5章から構成されていました。
第1章では、「何か」に憑かれるという「神懸り」の経験から生まれるような作品に着目しています。
展示の一番最初に現れたのは、
出口なおの「お筆先」
文字が書けなかった出口なおさんが初めて書いたとされる作品です!!
出口王仁三郎の「巌上観音」をはじめとする3作品

画像
出口王仁三郎 巌上観音

続いて岡本天明の「三貴神像」
そして金井南龍の ≪妣(はは)の国≫

息をするのも忘れてしまっていたんじゃないか、って思うほど圧倒されるものがありました。
ひとつひとつの作品がこれまでどれだけの人たちに衝撃を与え、人を表現の道へといざなってきたのかと感じざるを得ないある種の霊力のようなものをもった作品が目の前に繰り広げられているのだけれど、さらなる衝撃はこのあとにやってきました。

第2章では、普通の人では感知しえない「何か」を幻視する作家を紹介しています。
人間を超越した「何か」がもたらすもの、その何かと表現者の関係性に着目して、江戸時代から現在にいたる日本の作品を有名、無名にかかわらず紹介しています。

村山槐多 バラと少女
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古賀春江《サーカスの景》

3章、4章では、内的光を求めたもの、神、仏、魔を描いたものを。
江戸時代の円空の十一面観音像♡
ご神木と向き合い、そのなかの神像をとらえたものなど、自然の中の神を表現した作品たちもとてもよかった。
素戔嗚がテーマになっているものも多くありました。

これはとても好きな作品のひとつです。
「孤高の画家」「蠟燭の画家」として知られる 高島野十郎の 「蠟燭」
じっと見ていると蝋燭に照らし出される自分の奧と対峙しているような感覚になります。どれだけの時間、蝋燭を見つめ続けて描き続けたのだろうかと思います。
そして、野十郎は「蝋燭」を生涯にわたって描き続けながらも、決して展覧会に出すことも、売ることもなく、自分にとって大切な人へ感謝の気持ちを込めて一枚一枚手渡したのだそうです。

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この展覧会に出品されているある作家さんが

孤独というのは、神とか超越的な物と人間との垂直の関係であり、
この会場にあるのは孤独に対応した作品ばかりなんだとおっしゃっていまして、
なるほど、と思いました。

すさまじい狂気を感じる作品も数多く、
「何か」がやってくるのを待ち、その「何か」に触れて、それを生み出していく瞬間というのはきっと狂気に近いものなのではないかとさえおもいました。
探究者たちの叫びが聞こえるようでした。

ものすごく集中して見たのと、作品が放つものすごいパワーに、後半ばてばてになってしまいました。。苦笑
体力勝負です。

画像
牧島如鳩《魚藍観音像
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中園孔二《無題》

約140点の作品すべてがすごい迫力でせまってきて、コトバも発せられず、
圧倒され続けました。

第五章の最後の最後に、岡本太郎、草間彌生、横尾忠則といった、超メジャーな
しかも色使いや形がとってもインパクトがある方たちの作品が並んでいるのですが、
それがね、ものすごく「ふつう」に見えるんですよ。

やっと「ふつう」の世界に帰ってきた!という奇妙な安心感さえ感じました。
ここでも、思いがけず宮沢賢治の作品にも再会して、岩泉~花巻~宮古の旅以来、賢治を身近に感じているわたしです。

ぞわ~~っとする感じがマックスになった作品のひとつ

舟越直木《マグダラのマリア》

写真は撮影禁止なので、これらの作品の写真はおかりしてきたのものです。

展覧会は6月25日(日曜日)までです。