カテゴリー別アーカイブ: 好きなもの

小林秀雄講演録 ゴッホについて

  偶然に手にした、小林秀雄さんの講演の録音
小林秀雄さんと言えば、教科書にも載っているような日本を代表する批評家であり、芸術家ですね。

私はどのようなタイプのものでも、小説の類いは好きだけれど、思考をフルに働かせないといけないようなものは苦手。
これまでどうも苦手意識があって、手に取って読もうとするまでの食指が動かなかった小林秀雄さんの著書。

苦手を克服しようなんて気持ちはさらさらなくて、どんな声の人なんだろう?っていうくらいの軽い気持ちだったんだけれども・・・

ゴッホについて語るその講演を聞いて、
これまでちゃんと文章を読んでこなかったこと、
読もうともしなかったこと、
いや、
こんなにも胸躍る素晴らしいものに気づけなかった自分のアンテナを恥じるほどの、衝撃があったのでした。

面白くて、脈動していて、踊るように軽妙な語り口とその声がす~~っとはいってきて、小林秀雄さんの世界に引き込まれてしまいました。

いまさらですが・・・

すごい人ですね(..;)

ゴッホがどのようにして、どんな意識で、どのような思いを持って、描いていたのか、、、
それを知らずしてゴッホの絵をみても表層しかわからないと。。
ゴッホが弟さんにあてた手紙を読み尽くし、ゴッホについて知ろうとされたことがとても良く伝わってきます。

あらためて、ゴッホの絵を観たいな~と思います。



















顕神の夢ー幻視の表現者 圧倒的世界をみた

鎌田東二先生が監修された展覧会

「顕神の夢ー幻視の表現者ー村山槐多、関根正二から現代まで」
@岡本太郎美術館 を19日日曜に見てきました!!

今週末(25日まで)までで、残りわずかなので、ぜひとも紹介したいという気持ちはあふれるのに、
あまりにも圧倒されて、胸のあたりがグワングワンしていて、コトバにできずにいました、、、、(..;)

『見逃すと一生後悔するレベルの展覧会』だと保証します、と評していらっしゃる先生がいらして、ならば!!と観にいったのですが、
とにかく、とにかく、とにかく、

見て良かった!!と思いました。

展覧会は全部で5章から構成されていました。
第1章では、「何か」に憑かれるという「神懸り」の経験から生まれるような作品に着目しています。
展示の一番最初に現れたのは、
出口なおの「お筆先」
文字が書けなかった出口なおさんが初めて書いたとされる作品です!!
出口王仁三郎の「巌上観音」をはじめとする3作品

画像
出口王仁三郎 巌上観音

続いて岡本天明の「三貴神像」
そして金井南龍の ≪妣(はは)の国≫

息をするのも忘れてしまっていたんじゃないか、って思うほど圧倒されるものがありました。
ひとつひとつの作品がこれまでどれだけの人たちに衝撃を与え、人を表現の道へといざなってきたのかと感じざるを得ないある種の霊力のようなものをもった作品が目の前に繰り広げられているのだけれど、さらなる衝撃はこのあとにやってきました。

第2章では、普通の人では感知しえない「何か」を幻視する作家を紹介しています。
人間を超越した「何か」がもたらすもの、その何かと表現者の関係性に着目して、江戸時代から現在にいたる日本の作品を有名、無名にかかわらず紹介しています。

村山槐多 バラと少女
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: o0744060015288737623.jpg
古賀春江《サーカスの景》

3章、4章では、内的光を求めたもの、神、仏、魔を描いたものを。
江戸時代の円空の十一面観音像♡
ご神木と向き合い、そのなかの神像をとらえたものなど、自然の中の神を表現した作品たちもとてもよかった。
素戔嗚がテーマになっているものも多くありました。

これはとても好きな作品のひとつです。
「孤高の画家」「蠟燭の画家」として知られる 高島野十郎の 「蠟燭」
じっと見ていると蝋燭に照らし出される自分の奧と対峙しているような感覚になります。どれだけの時間、蝋燭を見つめ続けて描き続けたのだろうかと思います。
そして、野十郎は「蝋燭」を生涯にわたって描き続けながらも、決して展覧会に出すことも、売ることもなく、自分にとって大切な人へ感謝の気持ちを込めて一枚一枚手渡したのだそうです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: o0632080015288719030.jpg

この展覧会に出品されているある作家さんが

孤独というのは、神とか超越的な物と人間との垂直の関係であり、
この会場にあるのは孤独に対応した作品ばかりなんだとおっしゃっていまして、
なるほど、と思いました。

すさまじい狂気を感じる作品も数多く、
「何か」がやってくるのを待ち、その「何か」に触れて、それを生み出していく瞬間というのはきっと狂気に近いものなのではないかとさえおもいました。
探究者たちの叫びが聞こえるようでした。

ものすごく集中して見たのと、作品が放つものすごいパワーに、後半ばてばてになってしまいました。。苦笑
体力勝負です。

画像
牧島如鳩《魚藍観音像
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: o0533080015288720626.jpg
中園孔二《無題》

約140点の作品すべてがすごい迫力でせまってきて、コトバも発せられず、
圧倒され続けました。

第五章の最後の最後に、岡本太郎、草間彌生、横尾忠則といった、超メジャーな
しかも色使いや形がとってもインパクトがある方たちの作品が並んでいるのですが、
それがね、ものすごく「ふつう」に見えるんですよ。

やっと「ふつう」の世界に帰ってきた!という奇妙な安心感さえ感じました。
ここでも、思いがけず宮沢賢治の作品にも再会して、岩泉~花巻~宮古の旅以来、賢治を身近に感じているわたしです。

ぞわ~~っとする感じがマックスになった作品のひとつ

舟越直木《マグダラのマリア》

写真は撮影禁止なので、これらの作品の写真はおかりしてきたのものです。

展覧会は6月25日(日曜日)までです。

宮沢賢治を読む

宮沢賢治といえば、「童話作家」というのがこれまでのわたしの賢治の認識。
好きなのは「風の又三郎」

賢治が30歳のときに講義した 「農民芸術概論綱要」 ご存じですか?

わたしはこれを読んで
改めて賢治という人を知りたくなった、とても激しくゆさぶられた一冊

まず序論で、打ち抜かれてしまいました。
序論は全文を紹介しますね^^


おれたちはみな農民である ずいぶん忙しく仕事もつらい
もっと明るく生き生きと生活をする道を見つけたい
われらの古い師父たちの中にはそういう人も応々あった
近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直感の一致に於いて論じたい
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団 社会 宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教えた道ではないか
新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである
われらは世界のまことの幸福をたずねよう
求道すでに道である

Miyazawa Kenji.jpg

そしてさらにさらに続く賢治のコトバ

独特のリズムをもった語り口が、身体の奧にしみいるように振動する。
とても好きなフレーズがあるのでこれも紹介しますね^^


風とゆききし 雲からエネルギーをとれ

まづ もろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばろう

巨きな人生劇場は時間の軸を移動して不滅の四次の芸術をなす
おお朋だちよ 君は行くべく やがてはすべて行くであろう

われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である・・・

われらの前途は輝きながら険峻である
険峻のその度ごとに四次芸術は巨大さと深さとを加える

永久の未完成これ完成である


理解を了えばわれらはかかる論をも棄てる
畢竟ここには宮沢賢治1926年のその考えがあるのみである



響いた方は是非音読をおすすめします^^

そして先日岩手の宮沢賢治記念館を訪ねました。
旅の話はまた次回に。